祖母が買ってくれた顕微鏡
Oncologyグループで薬理試験を担当しています。培養したがん細胞をマウスへ移植して作製した担癌モデルを使用し、様々な被験物質の投与による薬効評価を行います。私はAxceleadに入社して初めてがん研究に携わりましたが、使用するがん細胞によって、増殖する腫瘍の形状、性質、被験物質への感受性も多種多様で、がんという疾患の難しさを実感していますし、その分やりがいも感じています。Axceleadでは試験の実施に加えてお客様との関りも非常に大事な業務ですが、お客様からご相談いただいた試験に関して、自身で調べてご提案した内容が採用されたり、実際にご提案の方法でよい試験結果が得られた時の嬉しさは一入で、Axceleadの目指す「PRO※」の大切さも再認識できました。
今では生きがいを感じながら日々研究に励んでいますが、最初から研究者を目指したわけでありませんでした。小さい頃は周囲に影響を受けやすく、テニスが趣味の両親を見て、テニスプレイヤーになりたい、友達が小説家になりたいと言っているのを聞いて私も小説家になりたい、と将来の夢がコロコロ変わっていましたが、小学生の頃祖母に買ってもらった顕微鏡で葉脈を見たりするのが面白くて、歴史など暗記するものよりも手先を使ったり、理論があって結果がある方が好きだなと感じ、徐々に研究者への道を歩むようになりました。
※PRO:Partnership research organization
新たなサービス「同所性移植モデル」が大きな自信と成長へ
2019年より、同所性移植モデルの作製に力を入れています。がん領域の薬理試験では、動物の皮下にがん細胞を移植することで担癌モデル(異所性移植モデル)を作製する方法が広く使われていますが、同所性移植モデルでは使用するがん細胞由来の臓器にダイレクトに移植をします。この手法を行うには、臓器に移植する技術はもちろん、非侵襲的に腫瘍増殖を確認するための特殊な機械とそれを使いこなせる技術も問われますが、このモデルを用いることで、がん細胞が持つ本来の特性をより反映した評価が可能となると考えており、現在は脳腫瘍モデルや卵巣がんモデル等、数種のモデル作製に成功しています。
特に脳腫瘍モデルについてはお客様からのお問い合わせも多く、現在進行形で試験を進めているご依頼案件もありニーズも感じています。よりがん研究に役立つ試験系を確立していくにはまだまだ課題もありますが、Axceleadとしてご提供できる新たなサービスを作り出せたことは長年、実験動物技術者として創薬に携わってきた私自身の大きな自信と成長につながっていると思っています。
「美しさ」と「美味しさ」を兼ね備えた本格スイーツづくり
研究者として創薬に携わるか、お菓子の商品開発の仕事をするか一時期、本気で悩んでいたほどお菓子作りが好きです。製菓衛生師の国家免許も所持しています!調理師免許を取得することも検討しましたが、お菓子作りに特化した知識や技術を習得したかったので国家資格でもある製菓衛生師を取得。その後カフェを経営するための学校へも学びに通っていました。
味はもちろんのこと、スイーツの美しく芸術的なフォルムを表現することを大切にしていて、完成したスイーツは社内でシェアすることが多いのですが、手間と時間をかけて作り上げたものを食べてもらい、「美味しい」と喜んでもらえた時はとっても嬉しいです!いつしか、カフェをOPEN出来たらいいなと想いを膨らませています。
その先にある患者さんの笑顔のために
26歳の時に同年代の関節リウマチ患者の方と知り合い、友達になりました。15歳でリウマチを発症し10年治療を続けていた彼女が言っていました。完治しないとわかっているのに、10年経った今でも、主治医に「治りますか?」と聞いてしまうことがある、と。その言葉が忘れられず今でも心に残っていますし、あり方を見直す機会にもなりました。これまでは、「研究が面白い」「実験した結果が出た面白い!」という感覚で研究していましたが、それだけではダメだ!その先にある患者さんがいて自分は大事な仕事をしているんだ!という自覚がより湧いてきたのです。
現在私は、がんの試験を担当していますが、昔は治らない病として認識されていたがんも、今は治せる疾患のひとつになりつつあります。同様に難病と言われている疾患も、私たちの努力で「治せる病気」に一歩近づけるのではないか、その先にある患者さんの笑顔のために少しでも貢献することができたら、創薬研究者としてこれ以上の喜びはない、と思っています。