「分かりやすさ」に魅せられて
Protein Scienceのグループに所属し、創薬ターゲットに対する化合物の相互作用メカニズムを明らかにする業務に携わっています。日本ロシュ、中外製薬、武田薬品工業を経て、Axcelead Drug Discovery Partners に転籍しましたが、一貫してX線結晶構造解析に携わり、化合物の結合部位を特定し、いかにして化合物が作用しているかを可視化してきました。最近は、Biophysics技術(表面プラズモン共鳴や等温滴定カロリメトリー)を用いた相互作用解析を行い、スクリーニングにより得られた化合物の検証にも携わっています。
研究者を志し、どの会社でも変わらずにX結晶構造解析を行っているのは、その「分かりやすさ」に魅力を感じたからです。タンパク質分子は条件が整えば結晶化し、構造解析が可能となり、例えば、薬剤のターゲット分子に対する相互作用様式や、ウイルスに対する中和抗体の結合部位を特定することができます。それが、引いては論理的な化合物設計や薬効の解明に繋がることもあります。当初は純粋に生命の神秘を解明していきたいと思っていましたが、自分の続けている研究が誰かの創薬研究の一助となり、結果的に社会へ貢献できればと考え今に至っています。外資企業から内資企業まで研究環境は大きな波にもまれてきましたが、細かいことには一喜一憂せずに、自分の探求心を大切にしています。
世界で初めての“小さな”発見
前職の時代に同僚が、KRASという癌に重要なかかわりを持つタンパク質に結合する化合物を見出しました。その化合物の作用メカニズムを解析したいという提案がありX線結晶構造解析を行ったところ、化合物の作用部位を特定することができ、作用機序の解明に繋がりました!ニュースになるような歴史を変える発見ではないですが、このような小さな発見が、創薬研究に役立てば良いなと思っていますし、今後もこのような発見を日々コツコツと積み上げていきたいです。
身近な変化を楽しむ
海外旅行が好きで海外に住んでいるときは週末に近隣の国へ旅行していました。今はパンデミックのため遠出を避けているので、近所の湘南を家族でウォーキングしています。咲いている花々を見て四季の変化を感じたり、例えばバラ一つとってもいろんな種類があるんだなと、身近にある変化を楽しんだりしています。COVID-19の問題が収束したら、国内の神社仏閣巡りや海外の遺跡巡りにも行きたいと思っています。
知見を提供して、創薬研究の加速化に貢献を
最近は、クライオ電子顕微鏡による構造解析にも取り組み始めました。サイエンスの日進月歩をフォローして研究の幅を広げ、薬効などの作用メカニズムを科学的に明らかにしたいと考えています。どのようにすれば活性が向上するのか、なぜ耐性が出るのか、それをどのように克服するのか、などの知見を提供することで、クライアントの皆さまの創薬研究の加速化に貢献していきたいと考えています。