きっかけは些細な疑問から
「病気はストレス、食事、運動不足など生活習慣の蓄積によって起こる。」と言われていますよね?ですから、常日頃から何を食べ、何を食べないかを選択することが予防医学の観点から重要と考えていたので、学生時代は研究テーマとして栄養生化学を選択しました。一方で、キノコやフグの「毒」で亡くなられるニュースをみて、「どうして、そんなことが起こるんだろう?」と思ったことがきっかけで、毒性学にも興味を持ったんです。就職する際、食品会社か製薬会社かで悩みましたが、最初にお声がけ頂いた武田薬品に入社を決めました。その後、武田薬品薬剤安全性研究所で新薬の安全性評価を中心に約30年間研究してきました。
答えのない課題を解決してきた経験が自信に
幸運にも十数もの新薬創出に関与することができました。グローバル毒性担当責任者として、新薬開発の全行程(化合物選別のスクリーニングから承認申請まで)を担当した化合物が2品目あります。いずれも武田薬品の最重要課題で、first in classの画期的な新薬でした。1品目を上市するまでに十年以上かかります。その間に毒性が問題となり、候補化合物を開発中止するかどうかの判断を迫られることが複数回ありました。いずれの毒性問題も教科書に答えが記載されている訳でもなく、文献検索しても回答が得られませんでした。考え抜いた上で実験計画を立て、自らが実験をしてデータを創り、ヒトへの安全性を証明する必要がありました。その過程では、全世界にいるエキスパートや規制当局(PMDA、FDA、EMA等)とも十分な議論が必要になってきます。しかし、それらの答えのなかった問題を解決し、新薬が上市された時の喜びは何事にも代え難いものです。これらの経験が、コンサルティングをする上でも自信となっています。
薬の偉大さを実感したからこそ
画期的な新薬により、病気であったひとの日常が一変することをこれまで何度も見てきました。例えば、寝たきりであったひと、歩けなかったひと、頻回の下痢でトイレから出てこれなかったひと、腹痛で夜寝られなかったひとが、あるお薬で発病前の日常生活に戻れます。「この新薬のおかげです」と臨床の先生や患者様本人から言われたことがあり、薬の偉大さを実感しました。これからも、クライアントとともに画期的な新薬創生に貢献していきたいと思います。
魂が震えるほどの出会い
海外旅行が趣味で、目的のひとつは“かっこいいな”と思う人に会ってエネルギーを高めることです。本物の人物を求めて、長い方だと40年くらい継続して講演を聴きに行っています。また、チャレンジしている方から話を聴いて活力にしています。あと、絵を観ることも好きで、ある絵画を観たときその前から動けなくなるほど魂が震えたことがありました。こんなことは初めてで自分でもびっくりしました。実際と写真とでは絵から発信されるメッセージが全く違うんですよね!その感覚になりたくて実は毎年のように観に行ってるんですよ。どんな絵画か?というとロンドンのナショナルギャラリーにある『レディ・ジェーン・グレイの処刑』という絵画です。家にはポスターを飾っています。仕事もプライベートも魂が喜んでいるか?どうかを基準に楽しく過ごすことを大切にしています。