3. 試験の感度・特異度を高めて安全な医薬品を臨床へ送り出す!
    グローバルスタンダードな試験品質

ストラテジーの重要性についてはよく分かりました!次に試験の質・精度といった点を
            伺っていきたいのですが、企業間で機器や設備に違いはありますか?

非臨床試験用のテレメトリーシステムは既に長い歴史
があり、幾つかの確立されたシステムを何れの会社も使用していると思います。Axceleadでは、世界で最も流通しているDSI社のハードウェアと、データ解析システムとしてPONEMAHを使用しています。何れも最新のバージョンで、作業効率が非常に良くなっています。試験施設は最近リノベーションし、防音加工したテレメトリー試験専用の部屋で実施しています。スタッフもガイドライン制定当時から従事している熟練者が揃っていて、これだけのスタッフ、施設・設備を備えている会社は国内では少ないと自負しています。

同じ機器を使用しているとなると、例えば偽陽性・偽陰性といった試験の精度は、
            企業間で差が出ないものでしょうか?

良いポイントですね。「機器が同じなら、何処でやっても同じでしょ。」と思われがちですが、テレメトリーの試験は、結果を出すまでに非常に多くのプロセスがあり、データに影響する多くの要因が複雑に絡み合っています。それぞれについて施設毎に経験とノウハウが違うので、データの精度も変わってくると思います。自由に動きまわっている動物から血圧、心拍数、心電図を測定するので、間違って測定しないようにノイズの少ない血圧、心電図波形を取るノウハウが必要になりますし、測定するパラメータは日常大きく変動しているので、被験物質の作用と生理学的な正常変動を見分ける科学的な経験も必要になります。これらも踏まえて試験をデザイン・実施するノウハウが、試験系の精度を決める鍵になります。

試験技術やノウハウが重要になってくるんですね。解析方法にもこだわりがありますか?

解析方法も重要ですね。 例えば、QT間隔というのは心拍数に依存していて、心拍数が遅ければQT間隔は長くなり、早ければQT間隔は短くなります。
そこで、補正をかけて、ある一定の心拍数と仮定してQT間隔を評価するのですが、その補正方法が適切でないと、偽陽性になったり、偽陰性になってリスクを見逃してしまいます。
そうしたことが起きないように、解析方法を含めてしっかり試験系のバリデーションを行い、感度・特異度*など様々な試験系の限界を知ったうえで、被験物質の評価を行うことにはこだわりを持っています。
* 感度:実際に陽性のものが、試験結果でも陽性と判定される確率(真陽性)
   特異度:実際に陰性のものが、試験結果でも陰性と判定される確率
    (真陰性)

▶グラフをクリックすると拡大されます

※引用  QT PRODACT:Sensitivity and Specificity of the Canine Telemetry Assay for Detecting Drug-Induced QT Interval Prolongation.   Miyazaki, H. et al., (2005). J Pharmacol Sci.99, 523 – 529.

具体的にはどのような補正式を使用されているんですか?

現在は「個体別補正」という方法を主に使用しています。従来の補正式というのは、簡単に言うと決まった係数を使って補正するのですが、個体別補正法では個体別に係数を算出して補正します。その補正式に使用する係数は動物の種毎にも違いますし、動物毎にも違います。ただ、同じ個体であれば、係数がほぼ同じになることが分かっているので、個体毎にその係数を使って補正する方法です。この補正式を使用すると、偽陽性・偽陰性、あるいはミスジャッジを減らすことが出来ます。従来法と比べわずかな違いですが、QTが延長すると、その時点で開発を止めてしまうリスクがあるので、非常に重要なポイントです。

▶グラフをクリックすると拡大されます

※引用  QT PRODACT:Sensitivity and Specificity of the Canine Telemetry Assay for Detecting Drug-Induced QT Interval Prolongation.   Miyazaki, H. et al., (2005). J Pharmacol Sci.99, 523 – 529.

この個体別補正というのは、多くの会社で使用されているんですか?

実は、この非臨床のテレメトリー試験の個体別補正、私がやり始めたんですよ(照)。だいぶ昔になりますが。
その後、多くの研究者がより的確に補正できる方法を提案し、進化を続け、今でも多くの会社で使用されています。

え?!?!宮﨑さんが考案されたんですか?!?!めちゃくちゃスゴイ人じゃないですか!!!
          インタビューするのが急に恐れ多い気がしてきました・・・

なんでも聞いてください(笑)。当時、QTの補正は固定係数を使った方法が当たり前の時代でしたが、テレメトリーのデータ、QT-RRプロット*の分布は個体毎に違うことが気になっていました。そんな時、メルクの同僚が毒性試験の心電図の背景データの分析に使用していた方法が目に留まり、テレメトリー試験の24時間の個体毎のデータセットに応用してみたところ上手く機能したので、その後、QT-RRプロットの分布や係数に与える影響因子を特定し、個体別補正法のバリデーションを行ったというのが経緯です。
  解析方法は精度の問題だけではなく、試験コストにも大きく影響します。テレメトリー試験ではもともと膨大なデータセットを処理するので、選択する方法によって、解析に掛かる時間が大きく変わってきます。私達のチームでは、これまでに培ったノウハウと知識を活かして、精度とコスト両面で最適な解析方法を提案するように心がけています。

* QT-RRプロット:QTをY軸に、RRをX軸にとり、一定の時間内に得られたQT-RRペアをプロットした図

4. データ品質を第一に、お客様一人一人の課題解決を目指して

例えば、海外で申請をしたいというお客様もいらっしゃると思いますが、日本と海外での違いはありますか?

申請用の試験はガイドラインがありますので、基本的な試験項目やデザインに大差ないと思いますが、細かいことを言うと、データの表現、解析方法、評価方法などは微妙に違いますね。Axceleadの研究者は、これまで国内外の研究者と様々な議論をしており、こうした違いも抑えているので、海外に申請したいケースや、海外のお客様が日本での申請を目指しているケースなど、様々なニーズにご対応できると思います。

少し観点が変わりますが、ベンチャー企業などの場合、自社で臨床開発までは行わずに途中で導出されたい方も
          いらっしゃると思いますが、製薬会社出身の視点から、「こんなデータを揃えた方が価値が上がるのではないか」
          といったアドバイスも出来るのでしょうか?

そうですね。これまで製薬会社で導入品の評価もしてきましたので、製薬会社の方がどういったところに注目しているか、どういったデータを重視しているか凡そ分かります。そういった視点でも、お客様の試験計画などをサポートできたらと思います。導出するステージにもよりますが、例えば、GLP試験を始める前の段階でも、それまでに実施したin vitroとin vivoのデータから、GLP試験で起こるリスクをある程度予測できます。そこはin vitroを担当している高砂さんとデータを統合的に評価し、お客様のご要望も踏まえて、以後の試験計画やデザインをご提案させて頂きます。

やはりin vitroからin vivoまで統合的な視点が重要になるんですね。最後に今後の目標を教えてください!

私達の使命の一つは “お客様に結果を正確にフィードバックすること“だと考えています。これは単に試験をプロトコール通りに実施しデータを報告するということではなく、先程お話した、本当に作用のあるものは作用がある、本来作用が無いものは作用が無い、つまり、試験系の感度・特異度、科学的な背景を踏まえて、結果を正確にお伝えすることだと思っています。もう一つのポイントは、コスト面とスピードだと思います。スクリーニング段階からIND申請用試験まで、スクリーニング戦略や試験デザインを最適化することで、コストを抑え、スピードアップを図ることは可能だと考えています。私達の経験・ノウハウを最大限活用し、これからもお客様のベストパートナーとして高い意識を持って、心血管系の最適なスクリーニング戦略や安全性評価をご提供していきたいと思います。ぜひ、お気軽にご相談ください。

宮﨑さん、お忙しいところありがとうございました!

本日のまとめ


 
心血管系の安全性評価は、in vitroからin vivo、臨床まで統合的にリスクを
      評価することが重要

ICHガイドラインの重要なポイントやデータの考え方などを熟知した
      プロフェッショナルが集結し、最新のアプローチ方法を踏まえた最適な
      スクリーニング戦略や試験デザインをご提案

試験系の感度・特異度、科学的な背景まで考察して、お客様へ正確な結果を
      お伝えするとともに、データの解釈・リスク評価までトータルにサポート