最新設備と戦略的アプローチで挑むイオンチャネル創薬!~課題を打破する創薬力~

3“熟練技×最新技術”で高品質・高効率なスクリーニングを実現

電気生理学的な手法についてですが、まずマニュアルパッチクランプ法について教えてください。

関:マニュアルバッチクランプ法は、 イオンチャネルの研究分野においてゴールドスタンダードとされている手法で、代表的な方法にはホールセルパッチクランプ法があります。マニュアルパッチクランプ法で均質なデータを取得するのは大変難しく、コンスタントに様々なチャネルの測定ができるようになるには大体5年位はかかると思います。

そんなに高度な技術が必要なんですね!

関:はい、技術習得が難しいマニュアルパッチクランプ法ですが、電気生理学的手法はイオンチャネル創薬のスクリーニングには欠かせない存在です。オートパッチクランプ法は、マニュアルパッチクランプ法のような職人技は必要なく、かつスループットが高い点が魅力です。しかし、オートパッチクランプ法を用いても、やはり高い専門性は必要ですし、評価法の構築やデータの解釈には、豊富な経験とノウハウも必要になります。

SyncroPatch 384PEを用いたHTSも強化されているとお聞きしましたが、こちらはどんな特徴があるのでしょうか?

関:SyncroPatch 384PEは384wellプレート対応型の最新バッチクランプシステムで、高いスループットでのスクリーニングが可能です。また、蛍光色素を用いた測定法などの場合、細胞膜電位のコントロールが難しいため、ターゲットによっては、求めているMOAの化合物がヒットしなかったり、逆に求めているMOA以外の化合物もヒットし過ぎてしまって、2nd以降のスクリーニングに膨大な時間とコストがかかってしまうという課題がありました。しかしSyncroPatch 384PEを用いると、最適なパルスプロトコールで評価を実施することができるので、これらのリスクを抑えることが可能です。お客様のニーズにより合致したHit化合物を取得できる点も大きなメリットと言えます。現在のサービス体制としては、一年以内に評価系の構築とHTSが可能と考えます。

電気生理学的な測定系で他に気を付けていることはありますか?

平野:試験に使用する細胞の取り扱いにも細心の注意を払っています。電気生理学的試験は繊細な試験工程を有するが故、細胞のコンディションが大きく影響する試験系とも言えます。そこでAxceleadでは、電気生理学的試験の経験が豊富な研究員が細胞の維持・継代から担当しています。

スクリーニングに用いるライブラリーには何か特徴はありますか?

日比野:ライブラリーも重要ですね。Axceleadの化合物ライブラリーは非常に充実していて、ダイバーシティーと質の高い150万以上の化合物の中から、お客様がご希望のターゲットと想定されるMOAに適したライブラリーを厳選してご提案することができます。さらに、ランダムスクリーニングに加えて、in silico創薬技術を用いてバーチャルスクリーニングを付加することも可能です。

お客様にはどのような形でデータをご提供されているのでしょうか?

結果報告イメージ

日比野:Hit化合物に、Axceleadの 強みである付加価値の高い情報を加えてご提供しています。具体的にはAxcelead保有の過去の評価データ(細胞傷害性情報や化合物のアノテーション情報等)や、化学部門・Medicinal Chemistによる代表クラスタの構造特徴に関するコメントなども合わせてご報告しています。

4点と点を線に変えて“創薬”の実現を目指す

現在の評価法の課題は何でしょうか?

平野:標的となるイオンチャネルの機能や、イオンチャネルが実際に機能している環境(局在や分子複合体の情報)についてはまだ解明されていない点があります。通常スクリーニングには、イオンチャネルを強制的に発現させたCHO-K1細胞やHEK293細胞を使用することが多いのですが、単にイオンチャネルを発現させるだけでは、イオンチャネルの機能を正しく評価できていない場合もあります。
また、イオンチャネルは、通常複数のタンパク質(サブユニット)の複合体として機能していますが、スクリーニングでは、主要なサブユニット(α-サブユニット)のみを発現させて評価を実施することも多いです。しかし、イオンチャネルの種類によって必要なサブユニット、分子コンプレックスが異なりますので、現在の系では化合物の取り逃しが発生する可能性もあります。そこで、将来的には、生体から取得した細胞や、iPS細胞由来の細胞を使用することで、より本来のイオンチャネル機能を反映した評価法の構築を目指したいと考えています。

今後の発展が楽しみです!最後に、お客様の創薬に貢献できる、Axceleadならではのポイントを教えてください!

日比野:イオンチャンネルを標的としたHTSを考える場合、ターゲットとなるイオンチャネルを単純に活性化あるいは阻害すればよいといった戦略では難しい場合が多いと思います。冒頭でも少しお話しましたが、特にイオンチャネルはクリティカルな副作用が生じやすいターゲットです。選択性の出しにくい副作用の原因となるようなチャネルは存在するか、あるいは活性化様式、阻害様式の差別化でターゲットベースの副作用を回避できるのかなど、HTS 戦略を考えるうえで、考慮できる点・工夫できる点はたくさんあります。我々は長年の創薬研究の経験をもとに、Hit後の課題と対策を考慮しながらスクリーニング戦略をご提案させていただきます。

またイオンチャネルをターゲットとした創薬研究の推進にあたっては、イオンチャネルの機能以外の評価も重要な要素となります。Axceleadでは、これまでイオンチャネル以外にも、様々な創薬ターゲットに対して数百のHTSを実施しており、構造情報を基にした構造活性相関や、細胞レベルでのphenotypeの評価など、幅広い試験をスクリーニング戦略に組み込んでHit化合物の探索を行うことが可能です。

更に、HTS以降もHit Expansionから、化合物の最適化、化合物のin vivoでの評価、トランスレーショナルリサーチまで、創薬に必要な機能とプロフェッショナルが揃っていますので、単発の試験のみをご提供するのではなく、試験と試験に繋がりを持たせ、ベストな戦略を考え、お客様のゴール達成を最短で実現できるようなサポートを目指します。

日比野さん、関さん、平野さんありがとうございました!

本日のまとめ

  • イオンチャネル創薬は、バイオロジーや創薬ツール・評価法の進化により、 更なる可能性の広がりが期待されている
  • これまで実際の創薬現場に携わり、試行錯誤の上経験を重ねてきたスペシャリストが、イオンチャネル標的薬特有の課題やコツを踏まえながら、ベストなスクリーニング戦略をご提案
  • SyncroPatch 384PEなどの最新技術や、イオンチャネルアッセイ以外にも創薬に必要な評価法を戦略的に取り入れて、より効率的にお客様のゴール達成をサポート